名古屋にリニアがやってくる

費用対効果

お金がかかるのがリニア新幹線の問題点に挙げられます。

時速500キロオーバーで運行する予定のリニア新幹線は、狭い島国ということを 考えるとかなりのオーバースペックとの指摘もあります。 いくら時速500キロを出せるといっても短い距離ではその速度で走行できる 時間はそれほど多くはないからです。 現在の新幹線では東京-名古屋間を約1時間35分で走行しますがこれがリニア だと約40分になるとされており、中間駅が複数あることを考えると時速500キロ を出せる区間はそれほどないのでは、というのです。 東京から名古屋までが完成したら次は大阪まで繋げる予定で、その費用は10兆円 近くになる見込みなのですが、それだけの大金をかけてまでリニアを実現させるのは 少々割りに合わないという人もいるのです。 例えばアメリカ合衆国のアムトラックが運行する高速鉄道アセラ・エクスプレス は3時間40分の時間をかけてボストン-ニューヨーク間の340キロの距離を 走行しますが、これだけの長距離なら充分に効果があると言えるでしょう。 試算の結果ではこの区間をリニア新幹線で走行すると1時間で到着のようですし、 長距離ほどリニアの真価が発揮されるのです。 どんなに素晴らしい技術の結晶でも日本国内ではあまり輝けない可能性もあるのです。 それでもこの計画を進めるのは浪漫でしょうか。 高速で移動する乗り物に惹かれない男性は少数ですし、自分に実益が少ないとしても 「リニア新幹線て時速500キロだってさ、これって高速道路を走る自動車5台分 の速度だよね、想像することが出来ないほどの凄まじいスピードだよ」とドキドキ が止まらなくなってしまいます。 青年や中年がスポーツカーに憧れるのは格好いいフォルムが理由になるだけでなく、 超高速を出せるからでもあるのです。 なのでスポーツカーよりも速いリニアの誕生には、自分がオーナーになるわけでも ないのに国民は大きな関心を寄せていますし、開発者も期待を背負っているのです。 運行が始まって短時間で旅客を運ぶことよりもその技術を確立することを目標 にしている、と言っても良いでしょう。 だいたい時速500キロなんてみなさんの生活の中ではそうそうお目にかかること のないスピードですし、ぜひ体験したいと思うのは当然です。 食事中に手羽先が時速500キロで飛んでくることもなければ、座っているテーブル にひつまぶしが分速10キロで届けられることもありません。 大多数の方にとってほぼ未知の領域にあるのがリニア新幹線が実現させる時速500 キロで、これに一番近そうなのは高速道路を走行する自動車になるでしょうか。 時速100キロで長野方面に向かう軽自動車が同じく時速100キロで岐阜方面に 走行する軽貨物便のトラックとすれ違うと、お互いの姿は時速200キロで向かって きて遠ざかっていくように見えます。 リニアはその倍以上のスピードなのでこれでもまだ生ぬるいですが、それ以上の速度 を体感することは特殊な状況に身を置いている人でなければ無理なのです。 そんな時速500キロの世界を乗車賃さえ払えば体験させてくれるリニア新幹線は、 単に移動するためだけに利用する人ばかりでないのでは、とも予想されます。 ジョナサンのようにスピードを追求する姿勢に共感した、という理由で関心を持つ 男性もきっと多いでしょうから、開通してしばらくは予約の競争率も高そうです。 なので費用に見合う効果が得られがたいからリニアは不要だ、という意見は一理 あるのですが、男の浪漫ということを加味して考えると決して無駄な技術では ないと言わせていただきます。 それに将来的には海外に輸出することも考えられますし、他の分野でこの技術が 応用されることも充分にありえる話です。 リニア新幹線の乗車賃だけで考えるのではなく、さまざまな経済効果を生み出す 可能性を秘めているこの技術は日本の誇りとなるでしょう。