名古屋にリニアがやってくる

リニア新幹線の技術

東京-名古屋間をたったの40分で結ぶ驚異的な技術とは。

リニア新幹線は超電導を利用したかなり先端技術で、にかわには信じられないかも しれませんがふわふわ宙に浮いて進みます。 地上を移動する乗り物の多くは車輪と設置面との摩擦を利用して推進するのですが、 リニア新幹線はそうではないのです。 4輪の自動車も2輪の自転車やオートバイも、3輪車や1輪車もタイヤを動かす ことで前後に移動しますし、鉄道はもっとたくさんの車輪を使いレールとの摩擦を 産み出して重量のある列車を走行させています。 でもリニア新幹線は車両に搭載した超電導磁石と、レールのある地上のコイルの 磁力により浮上して移動することが画期的です。 時速500キロにもなると車輪とレールを使っていては消耗も激しくなるので定期的 なメンテナンスも大変になるかと思われますが、接触しないリニアは安定した走行 を実現させることができるのです。 まさに次世代の運送業の目玉となる革命的な手段でしょう。 超電導リニアの研究はけっこう昔から行われておりテスト走行も1997年には スタートしていましたが、商業用に実用化するには安全性を高める必要があり研究 に研究を重ねているうちにここまでの時間がかかりました。 なので超電導自体は今となっては新しいアイデアではなく、ずっと暖めてきた技術 でもあるわけで、あとは実用化を待つばかりという段階が長かったようです。 リニアの核心となる超伝導は、ある金属や酸化物を一定以下の温度にした場合に 起こる電気抵抗がなくなる現象を使ったもので、超電導状態になったコイルは一切 の抵抗がないため一度電流を流すといつまでも電気が流れ続けます。 ロスが無い状態になるのでとっても素晴らしいのですが、その状態にすることが とても難しいのでまだまだ多くの方面で実用化されるには至りません。 リニア新幹線ではその素材としてニオブチタン合金を用い、マイナス269度まで 低温にすることでこの状態を作り上げます。 この温度を聞くだけでも寒気がするほど困難なことだと理解できますでしょうか。 名古屋市や豊田市だけでなく、もっと言えば日本やアメリカだけでなく世界中で、 宇宙のどこを探してもマイナス273.15度よりも低い温度は存在しません。 絶対零度と呼ばれる最低温度がその温度で、それ以下の温度は世の中には無いと されており今までに観測されたこともありません。 全ての物質が活動を停止する絶対零度はそれ以下の温度になることが不可能だと 科学的に考えられている、史上最高の低温なのです。 それとほぼ同レベルのマイナス269度を保ったまま運行するのですから、蒸気 機関車と比べると格段の進化でしょう。 この温度も日常では体験できない低温で、仮に室温をマイナス269度に下げたら 眠ったまま二度とは目覚めない可能性しかありません。 氷点下ですら服装次第では命に関わるのですから、絶対零度よりも数度高いだけの 室温だと並みの装備では生き延びることはできません。 当然そこまですさまじい低温を味わったことのある人間はほとんどおらず、名古屋 の冬で雪の降る夜に「今夜は冷えるねぇ、凍えそうだよ」と弱気な発言をするような 人では数秒も耐えられない極寒がリニアの秘密になるのです。 電気抵抗0の世界はさぞかしエネルギー効率もよいのでしょうが、超電導状態を 創生するには大掛かりなシステムが必要なことがネックです。 それさえなければ電化製品や自動車にも応用されそうな技術なのですが、現時点の 科学レベルではまだまだ遠く及ばず、大掛かりな設備でようやくリニア新幹線で この技術がお披露目されるわけです。 念のために付け加えておきますが、車内がマイナス269度になったりそれに近い 温度になるわけではありませんので、寒がりの方も安心してわくわくしつつ 2027年の始動の時を待ちわびましょう。