名古屋にリニアがやってくる

浮いて進む

浮くからといって名古屋市は重力が少ないわけではありませんよ。

リニア新幹線最大のチャームポイントは、とにもかくにも浮くことです。 「もっと巨大な飛行機だって浮いてるし別に驚くことじゃないでしょ。宗教団体の トップには浮く人間もいたらしいし、ボクだって修行すれば漫画の主人公みたいに 飛んだりできるかもしれないよ」との反論もありそうですが、少なくともこれまでに 浮いて走行する鉄道はなかったのですからチャームポイントとしては申し分ないかと 思われますし世間的にも同じような評価がされています。 翼を持つ飛行機やぶら下がっているロープウェイも浮いていると言えなくもありま せんが、その原理は全く違います。 リニア新幹線が浮上して走行する原理は、軌道上ガイドウェイの側壁両側に浮上 コイルと案内コイルが設置されているからともいえ、リニアの本体がそこを超速度 で通ると浮上コイルに電流が流れて車両を浮上させるのです。 車両には超電導磁石が付いており、電流の流れた浮上コイルも電磁石となるので 走行する本体を引き上げる吸引力と押し上げる反発力が発生する仕組みです。 浮上とはレールから上に押すことだと思っていたかもしれませんが、左右の壁面 から引っ張る力も働いているのですね。 この力は左右のバランスが狂うと力の大きい方に寄ってしまい車両が壁に激突 してしまいそうですが、その対策に用意されているのが案内コイルです。 レールの真ん中を走行するように、というか両側の壁のちょうど中央を通るように 軌道修正してくれるのが案内コイルの役目です。 右に寄ってしまったら左側の壁から吸引力を働かせて引っ張り、右側の壁からは 反発力が発生して押し戻し車両の位置がちょうど中間になるよう調整してくれます。 なので浮上しているからふらふら不安定なわけでもなく、けっこう安定した状況で 運行されるので乗車していても宙を舞っているような感覚は味わえなさそうです。 そもそも磁石の力で下側から反発力を働かせるだけでは車両の姿勢を維持する ことすら出来ませんので左右からも干渉するのが当然なのですが、リニアの仕組み を漠然と「磁石で浮上させるんだっけ」と認識しているだけだと側面のコイルの事 は全く気付かないかもしれません。 名古屋駅のナナちゃん人形の衣装が変わっても気付かないようなタイプの人だと、 リニア新幹線の浮上コイルと案内コイルにも全く気付かないのでしょう。 車両を空中で安定させるためにはこれらのコイルがどうしても必要なのですが、 仕組みをしっかり理解していない人には多い勘違いです。 では浮かせた車体はどうやって進むのでしょうか。 ここまできたら車両はもう磁石(超電導磁石)と同じ扱いをしてよさそうなので そうしますが、それに納得できない方は各自脳内で変換して読み進めてください。 磁石について皆さんがどれだけ深い知識をお持ちかは分かりませんが、N極とS極 があること位はご存知でしょう。 車両の超電導磁石はこの2つの極が交互に並べられており、おめでたく例えるのなら 紅白の幕のようになっています。 もちろんそんな派手なペイントはされてはいませんのであくまでイメージですが、 N極の次はS極、その次はN極と規則正しく並んでいます。 そこにガイドウェイの推進コイルに電流を流してやることで、反発して押しやる力 と吸引して引っ張る力が生まれ車両を動かすのです。 「磁石の力が凄いとは思っていたけどそこまでとは」と驚くかもしれませんが、 こんなカラクリで時速500キロまで加速させることが可能なのです。 浮上して移動するので高速でも騒音や振動も少なく、レールには接触せず空気に しか触れないため快適な乗り心地のようです。 今から名古屋-品川間を40分で駆け抜ける運行が楽しみで仕方が無い、想像を 絶する先端技術を早く体験したくて待ち遠しいですね。